びるこブログ

ビールを愛する病院薬剤師。伝えたいのは医療のこと、トレーニングのこと、健康について考えること。

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危険な薬から私を守れるのは私だけ

こんにちは! びるこです。

ブログ訪問ありがとうございます。

 

「Silence gives consent=無言は承認のしるし」と言うことで、頑張って声をあげて安全を勝ち取った話を今日は書いていこうと思います。

 

テーマは薬剤師の業務のひとつである抗がん剤調製です。

 

がんになるのは2人に1人

生涯で2人に1人はがんになると言われていることもあり、抗がん剤と薬剤師の仕事は切っても切り離せません。

思い返せば、私は9年働いて対応した患者さんの7割強はがん患者さんだった気がします。

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【2019年度 国内医薬品売上高ランキング】「キイトルーダ」トップに…「タグリッソ」など売り上げ急増 | AnswersNews

 

薬価が高いこともあり国内医薬品の売上上位はやはりがん治療薬です。

罹患率の高い肺がんに使用できる抗がん剤は中でも強いですね。 

薬もランキングで見てみるとなかなか面白いなーと思います。

HD:HazardousDrugs

抗がん剤をはじめとした医療従事者の健康に影響を及ぼす薬剤をハザーダス・ドラッグ(HD:Hazardous Drugs) といいます。

HDの定義
  • 発がん性
  • 催奇形性または他の発生毒性
  • 生殖毒性
  • 低用量での臓器毒性
  • 遺伝毒性 など

ようするに、触っちゃったり吸いこんじゃったり、針刺しで自分に誤って投与しちゃったりするとやばい薬をいいます。

 

HDの取り扱いは十分に注意しなければなりませんし、どの薬が該当するのかは把握しておく必要があります。

 

抗がん剤の調製は完全防備で行う必要があるので、こんな感じで調製しています。

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これは大学病院時代の私です。

無菌室のガラス越しに撮影してもらいました。

キャップにゴーグルにマスク2枚重ね、かつグローブも2枚重ねでガウンも着て完全防備しています。

 

無菌室の中の更に安全キャビネットという装置に手だけ突っ込んで作業していくわけですが、このような体制になったのはここ10~20年の話で、それまでは医師や看護師が病棟で調製しており危険な薬剤に晒されまくっていたのです。

 

恐ろしい話です。

 

不妊や流産のような健康被害も出ることが分かっているので、お年頃の女子としては困る事態になりますし非常に危険なことをしていたのだと今では分かっています。

 

現在はかなり安全に調製できるようになってはいますが、私も新人の頃は緊張と焦りで抗がん剤ピュッ!!! っと噴射させてしまったりして先輩にバレないように懸命に隠したことがありす。

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ONE PIECE尾田栄一郎

バレてたかな?笑

危険ですので、正確かつ丁寧に調製することが大切です。

自分の安全は自分で守る

私が薬剤師として働きだした頃には、抗がん剤は安全キャビネットの中で薬剤師が作るものという形が出来上がっていたのでシステムが私を守ってくれていました。

 

ですが、30~40年前から働いているような大ベテランさんの中には防護なしで調製するのが当たり前の時代を知っているためか若干危機感が薄い方々も居ます。

 

今いる病院では頻度はかなり少ないものの抗がん剤調製をすることがあるのですが、安全キャビネットが無いのです。

 

前任の薬剤師さんは私より30歳年上なのですが、私が入職するまで調剤台の上で思いっきり抗がん剤に曝露しながら調製していたと言われ愕然としました。

 

やだ、怖すぎる。

 

今でもポケベル使ってる人に出会ったような衝撃でしたが、もしかしたらそうゆう中小病院がまだまだあるのかもしれないなと思いました。

国によっても医療レベルの格差はありますから、安全をお金で買えない国もたくさんあるだろうとも思います。

 

抗がん剤調製ロボットも存在はしていますが、それこそ莫大なお金が無いと買えません。

 

がんの治療をしている人々も命懸けだと思いますが、抗がん剤を調製したり投与する側の医療従事者も命懸けなのですよね。

 

とにかく、私を守るのは私! と奮起した私が行ったことは

  • 曝露防護度の高いガウンやマスク、グローブの購入依頼
  • CSTD(閉鎖式薬物移送システム)の購入依頼
  • 気化しやすいシクロホスファミドなどの危険度の高い薬剤が必要な患者は然るべき設備を有する病院へ紹介する

 

「昔は普通に作ってたんだよ~」なんて最初は言われましたが、断固拒否して「設備がないなら作りません!」と押し通しましたら全部OKが出ました。

伝えようとする気持ちが大切です。

 

CSTDは安全キャビネットを使用してもまだ危険とされる「気化・エアロゾル化」が問題となる薬剤を安全に調製できるアイテムです。

優秀アイテムですが、お高いです。

安全は高い、悲しいけど現実です。

 

薬剤師が声をあげないと漫然と危険な状況が続いてしまうと感じ頑張って声を上げたことで、経営者の方や上級の先生方も分かってくれました。

 

病院の安全のためにも、他の医療従事者の安全のためにも、出来ないことは出来ないとはっきり伝える勇気も大事だなと思ったのでした。

 

なんだって、声を上げないと始まらないこともありますよね。

まとめ

  • 昔からの習慣を変えるのは大変だけど、声をあげる勇気が大切
  • 私を守れるのは私だけ
  • 抗がん剤、正しく作ればこわくない

最後まで読んでいただき有難うございました。

 

 無能な薬剤師にならないように、これからもがんばりたいです。

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