びるこブログ

ビールを愛する病院薬剤師。伝えたいのは医療のこと、トレーニングのこと、健康について考えること。

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医療事故から学ぶ

こんにちは! びるこです。

ブログ訪問ありがとうございます。

 

今日は7月に報道された痛ましい医療事故から学ぶという視点で書いていきたいと思います。

 

透析患者にハイリスク薬投与し死亡

2021年7月9日、関西地方の病院での死亡事故が報道されました。

日経DIの記事も参考にして、書いていきます。

「透析患者にハイリスク薬投与し死亡」から学ぶ :DI Online

腎不全(透析が必要)と発作性心房細動等の合併症を持つ80歳代女性が、自宅で転倒した際に大腿骨を骨折して緊急入院

入院2日目:患者の持参薬だった抗不整脈薬アプリンジン塩酸塩が院内非採用薬だったため、代替薬として担当医は院内採用薬であるピルシカイニド塩酸塩水和物を処方し、入院4日目から内服を開始

入院4日目:骨折に対する手術を施行

入院10日目:心室頻拍が出現したが薬物治療で一旦軽快

入院11日目:再度心室頻拍が出現。薬物治療を実施したが軽快せず、死亡。

 

病院での薬剤の投与量ミスによる医療事故ということで、他人ごとではないと感じました。

 

透析患者への薬剤投与量ミスによる事故は以前から報告があり、バルトレックスを常用量で投与し意識障害が起こった事例もありました。

何度も注意喚起がされている「腎機能」という部分でまた医療事故が起こってしまったことはとても残念です。

 

慢性腎臓病(Cronic Kidney Disease:CKD)は成人の8人に1人に当てはまり、血液透析や腹膜透析を行っている透析患者は34万人ともいわれています。

 

腎機能低下時、透析時の薬の用量調節については徹底的に覚えておかなければならない分野ですので、私も新人の頃にかなりしごかれました。

 

腎機能低下患者への減薬をスルーして調剤しようもんなら「どこ見て調剤してんだ!」と処方箋でビンタしてくれた先輩たちに今では感謝しています。(フィクションです)

腎機能に限らず検査値を見ずしての調剤やハイリスク薬の投与基準を把握していないことは本当に危険だということを理解しないといけないと感じます。

 

ただ、後から見れば絶対に阻止できたのにスルーしてしまったということが往々にして起こるのが現場です。

私もインシデント、アクシデントの経験を幾度もしてます。

環境要因や人的要因、様々な事由が重なって今回の事故も起こってしまったのだろうと思います。

 

再発防止策

今回の事故で、病院が再発防止策として挙げたのは以下の3点です。

  1. 薬剤処方の際に、腎透析の有無や腎機能の状態に十分留意して減薬等の適切な対応を取るよう関係職員に周知した。
  2. 腎透析患者や腎機能低下患者に慎重投与が必要な薬剤については、医師が電子カルテへの処方入力時にアラートが表示されるシステムを導入した。また、自動的に腎機能検査結果と処方内容が照合され過量投与が回避できるシステムを今度導入する。
  3. 来年度より、病棟薬剤師を配置すべく準備を進める。

 

調剤薬局でも病院でも、処方箋に検査値が印字されるシステムというのはかなり有用です。

検査値が確認できない状況での調剤というのはあり得ない事と考えて良いと思っていますが、全国のすべての病院にこの機能が備わっているわけではないことも承知しています。

 

予算の問題もあるとは思いますが、安全面へのコストはしっかり割いてくれる病院が増えてくれることを期待します。

また、システムだけではカバーしきれない部分も多々あるので、そこは薬剤師の頑張りどころだと思います。

 

私が気になったのは「3」の病棟薬剤師の配置という点です。

日経DIでも推察されていましたが、持参薬管理業務や薬剤管理指導業務はすでに行っている病院のようなので、おそらく「病棟薬剤師の常駐」という点がまだ配備されていないのだと思われます。

 

病棟担当の薬剤師が常駐している所であれば、今回の事故は防げた可能性が高いと思いますし、私も病棟業務を担当しているので悔しい気持ちになりました。

 

院内で使用する薬は薬剤師によって調剤されますが、入院患者の背景まで把握した上での薬の管理となると「病棟担当者」の力無くしては成り立ちません。

今回のような透析中に限らず、緑内障・喘息・妊娠中・アレルギー歴など、患者背景の把握は検査値の確認と同様に重要ですし、システムでのチェックだけでは漏れが出る可能性が高い部分です。

 

そもそもシステムに正しく入力されていなかったり、入力するのを忘れるという事故も起こるためです。

 

各病棟に薬剤師を常駐させるのはかなりマンパワーが必要ですし、そのために更なる人員確保となると人件費の問題も出てくるため、これもまた全ての病院で叶えられることではありません。

不必要な業務は削減し必要な場所への人員確保、すべての病院のすべての病棟に薬剤師を配置してもらえるのが理想です。

 

「薬剤師がいたのに事故が起こった」では本末転倒なので、日々勉強して焦らず業務に当たらなければいけないと気を引き締め直すきっかけとなった医療事故でした。

 

全ての処方を疑い、自分の知識を過信せず、疑わしきは時間がかかってもしっかり調べることが鉄則だと忘れないようにしたいです。

 

歴史から学ぶ

今読んでいる本の中に出てきた言葉に感銘を受けたので、最後に引用して終わりたいと思います。

 

人類は本当にさまざまなことを考え考えしながらも、大きな厄災を避けられずにきたのだということを感じます。

私たちには、いつもすべての情報が与えられるわけではありません。

けれども、与えられた情報のなかで、必死に、過去の事例を広い範囲で思いだし、最も適切な事例を探しだし、歴史を選択して用いることができるようにしたいと切に思うのです。

歴史を学ぶこと、考えてゆくことは、私たちがこれからどのように生きて、なにを選択してゆくのか、その最も大きな力となるのではないでしょうか。

引用:それでも、日本人は「戦争」を選んだ 加藤陽子

 

東京大学文学部教授の加藤陽子先生の素敵な言葉です。

ここでいう歴史とは日本史や世界史のことですが、歴史=過去から学ぶことは医療でも大切なことだと思います。

 

過去の事例から学び、考え、選択して生きていける人間になりたいです。

https://illust.pharmacists-memo.com/wp-content/uploads/2021/03/THINKING-HUMAN-2.png

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。