びるこブログ

ビールを愛する病院薬剤師。伝えたいのは、健康について考えること。

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伝説の裸足から生み出された薬

こんにちは! びるこです。

ブログ訪問ありがとうございます。

 

今日は、アスリートの高地トレーニングから生み出された薬について書こうと思います。

 

箱根駅伝のCM

薬の話の前に、最近のちょっと嬉しかった事を書きたいと思います。

 

箱根駅伝ファンの皆さんはCMで泣かされることが多いと思いますが、なんと、今年は私の愛するBUMP OF CHICKEN「Stage of the ground」サッポロビール「第98回箱根駅伝 4年生力篇」CMソングに決定したという嬉しいニュースがありました!

 

2002年の曲なのに、よくぞ採用してくださいましたと感激しております。


2022年1月2日・3日に日本テレビ系列で放送される「第98回東京箱根間往復大学駅伝競走」内で放映されるそうですが、今からCMで泣く気しかしません。

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CMで使って欲しいのは

迷いながら 間違いながら

歩いていく その姿が正しいんだ

君が立つ 地面は ほら

360度 全て 道なんだ

この部分か

その足に 託された

幾つもの祈りのカケラ達と

叫んでやれ 絞った声で

ここまで来たんだよって 胸張って

ここも捨てがたい、使って欲しいです。

 

私は涙腺の弱さ世界一なので、歌詞書きながらもう泣きそうです。

がんばれランナーのみんな!

サッポロビールは購入済みです。

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HIF-PH 阻害薬

薬の話に入りたいと思います。

なぜ箱根駅伝のことを書いたのかと言いますと、アスリートの高地トレーニングから生み出された薬のことを今日は書きたかったからなのです。

(高地トレーニング→長距離ランナー→箱根駅伝)

 

それは何の薬かというと、2019年に登場した腎性貧血の治療薬のHIF-PH阻害薬です。

これまで腎性貧血の治療薬は注射剤の赤血球造血刺激因子製剤しかなかったので、経口剤のHIF-PH阻害薬の登場はかなり注目されました。

 

低酸素の世界

なぜ腎性貧血の薬と高地トレーニングが関連するのかですが、高地の低酸素環境におけるトレーニングにより体内で起こる反応が科学的に解明されたことが関係しています。

 

高地トレーニングが長距離ランナーに注目されるようになったのは、1960年代に標高2000m前後の高地にあるエチオピアのマラソン選手アベベ・ビキラがオリンピックで2連覇を達成してからなのだそうです。

 

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伝説の裸足!

Wikipediaより

 

アベベはなぜ強かったのかと考え、エチオピアという高地に注目したのですね。

 

あえて酸素の少ない場所でトレーニングをする意義は、酸素の運搬を担う赤血球数を増やして体の持久力を高めることが狙いです。

 

一流長距離ランナーのVO2max(最大酸素摂取量)は一般人の1.5倍以上という凄まじい量だということが分かっています。

VO2maxを上げるために必要なのは赤血球だけではありませんが、長距離ランナーは酸素を運ぶ兵隊である赤血球を増やすためにも高地トレーニングを活用していると言えます。

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増えよ! 赤血球ちゃん!

はたらく細胞清水茜

私はVO2maxを測ったことがありませんが、多分雑魚だと思います。

また、「私貧血なんだよね〜」と言う女子は長距離で戦えません。

 

ノーベル医学・生理学賞

1990年代に、低酸素状態の時にエリスロポエチン遺伝子を活性化するタンパク質が発見されました。

それがHIF:Hypoxia-inducible factor(低酸素応答誘導因子)です。

エリスロポエチンは造血を促すので、赤血球の増産には不可欠)

 

そして、HIFが酸素濃度に応じてどのような反応をしているのか解明した研究者に、2019年のノーベル医学・生理学賞が贈られました。

 

簡単にHIF-PH阻害薬誕生の歴史を(妄想して)言い直しますと

 

アベベ強すぎ!

エチオピアのランナー速すぎん?

高地だから低酸素ってこと?

低酸素の時、細胞たちは何してるん?

HIFってやつが、酸素ない時頑張ってるらしい

HIF-PH って酵素はHIFを分解に追い込むらしい

(酸素がない時本来HIFは分解されず機能しますが、CKDでは低酸素を察知できずHIFは分解されてしまう)

PHの邪魔をすれば、HIFは分解されないからエリスロポエチンの産生を増やすことができる

腎性貧血治療薬誕生!

 

腎性貧血は、腎臓でのエリスロポエチンの産生が不全となっていることが原因となるので、エリスロポエチンを産生できれば貧血が改善するということになります。

研究者たちの素晴らしい頭脳と地道な研究に感動しました。

 

本当に創薬って奇跡だな〜と思います。

アベベから腎性貧血治療薬が生まれるなんて。

 

HIFは腎性貧血だけでなく、今後多岐に渡る医薬品への応用研究がすでに進んでいるようなので、期待大です。

 

奇跡は大切に

このように考えると、小さな錠剤一つにも多くの人の血の滲むような努力が注ぎ込まれているのです。

研究者さんたち頭良すぎて、奇跡が連発しているとしか思えません。

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ONE PIECE尾田栄一郎

 

赤血球を増やす薬というのはドーピングでも使用されることがあります。

もちろんこのHIF-PH阻害薬も世界アンチドーピング規定のリストに入っています。

患者さんを救う為に作られた薬なので、正しく使って欲しいなーと心から願います。

 

アベベエチオピアで走り込んで手に入れた持久力を、薬で手に入れようなんてダメ絶対!

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

BUMP OF CHICKEN「Stage of the ground」 - YouTubeyoutu.be